2018年英・米映画。日本では2019年9月公開。ドキュメンタリー監督のマシュー・ハイネマンが、実在した戦場記者の実話を映画化。主演は『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイク。
黒の眼帯が接した人の心に強く働きかける。人は欠損に恋をすると信じてやまない自称ゆるい映画ライターのモグモグです。「プライベート・ウォー」で飾らない姿を演じるロザムンド・パイクがますます好きになりました!これでもかってぐらいタバコを吸う姿がかっこいい。
「プライベート・ウォー」実話映画あらすじと感想、上映館情報!そしてネタバレあり
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この映画は、ジャーナリズムへのラブレターであると同時に、人生を懸けて厳しい現実を語るために戦い続けた〈メリー・コルヴィン〉へのオマージュ、だからこそ、単なる伝記映画にはしたくなかったーマシュー・ハイネマン監督はインタビューで答えています。
麻薬戦争の事態を迫った『カルテル・ランド』(2016)、シリアの市民ジャーナリスト集団のメディア戦争を伝えた『ラッカは静かに虐殺されている』(2017)と、骨太なキュメンタリーを手掛ける監督だけあって「プライベート・ウォー」の戦場のシーンなど見ごたえがあります。
戦争を描いた作品は多くありますが、リドリー・スコット監督の『ブラックホーク・ダウン』(2001)で描かれていた戦場のリアルさを思い出したりしました。
リアルさが結構衝撃だった
サンデー・タイムズ紙の特派員として、世界中の戦地に赴き、レバノン内戦や湾岸戦争、チェチェン紛争、東ティモール紛争などを取材してきた女性記者、メリー・コルヴィン。その後、スリランカ内戦で左目を失明し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながらも、黒の眼帯をトレードマークに、世界の関心を紛争地帯に向けようと努めた“生きる伝説”は2012年、シリアで受けた砲撃で命を落とすー。
メリー・コルヴィン本人
真実を伝える恐れ知らずのジャーナリストとして戦地を駆け抜けながらも、多くの恋をし豊かな感性で生き抜いた彼女の知られざる半生をデヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』で数々の主演女優賞にノミネートされたロザムンド・パイクが演じます。
ロザムンド・パイクの身なりを構わない感じがたまらなくよかった!
夫を追い詰めていく演技がぶっ飛んでいたロザムンド・パイク主演の『ゴーン・ガール』は2014年公開の作品なので少し前になりますけど、メリーと同一人物とは思えないカサッとした感じがとても美しく映っていました。
ロザムンド・パイクは生前のメリーの映像を観て、歩き方や姿勢を真似したのだそう。映画の最後にメリー本人の映像が流れるのですが、声なんてそっくりで驚きました。ちょっと低めの声が耳に心地いい。
「プライベート・ウォー」実話映画のあらすじ、主題歌はアニー・レノックス!
2001年スリランカでジャーナリスト入国禁止を無視してバンニ地域に乗り込んだメリーは、シンハラ軍と“タミル・イーラム解放のトラ”との銃撃戦に巻き込まれて被弾。その際、左目の視力を失ってしまいます。このことをきっかけに黒い眼帯を着けるようにり、彼女のトレードマークに。英国プレス賞、海外記者賞二度目の受賞を果たします。(一度目は2000年に受賞)
受賞シーンのメリー
2003年のイラクでは、12年前にサダム・フセイン政権によって殺害されたクウェート人の遺体を見つけるための手がかりを追い、その後遺体を見つけたメリーはスクープを手にするものの、最前線での体験はメリーにPTSDを発症。
入院、治療を行うも、現場に復帰したい思いを更にいっそう強めていくメリー。
2011年リビア国内では反政府デモ“アラブの春”が最高潮に達し、カダフィ政権を崩壊させる勢いとなっていく中、メリーはカダフィ大佐の単独インタビューに成功。一方、仲間のジャーナリストが爆撃で死亡し、精神はさらに蝕まれていくことに。
カダフィ大佐の単独インタビューでまたまた賞を受賞
そして2012年、シリアで受けた砲撃でメリーは命を落とします。
2002年に、2番目の夫だったボリビア人記者が自らの命を絶つなど(彼もPTSDだったのか?)、映画の中では父親の死がショックだったこと、母親とはうまくいっていないこと、子供が欲しかったが2度流産したことが語られています。作家の元夫や新しい恋人などメリーのプライベートも描かれてはいますが、彼女が第一線の戦場記者として駆り立てられるものは何なのか。世界に真実を伝える使命をなぜそこまで本人は負うのか。
彼女のセリフに「ここは冷えと飢えの街 市民の唇はこう問いかける 私たちは見捨てられた なぜなのか? 私は分からない」と語るシーンがあります。メリー自身も理解できない何かに突き動かされていることを表わしているセリフに思えてなりません。
ちなみに、2016年7月、メリーの家族を代表する弁護士が、シリア政府が彼女の暗殺を直接命令したという証拠を得たと主張し、民事訴訟を提起しました。そして、2019年1月、シリア政府がメリー暗殺の罪を認め、彼女の実家に3億ドルの損害賠償が支払われることに。
内戦の多くは、後ろに大きな国が隠れています。利益を得るために、結局得をしているのは誰なのか・・・
エンドロールを飾るのは、メリーの生きざまに心動かされた元ユーリズミックスのアニー・レノックス!なんと8年ぶりに手掛けた新曲だそう。タイトルは『Requiem for A Private War』。2018年ゴールデンクローブ賞で主演女優賞候補となったロザムンド・パイクとともに、主題歌賞候補となったそうです。