「ホテル・ムンバイ」実話を映画化!上映館・キャスト紹介と感想

日本では2019年9月公開、2008年11月にインド・ムンバイで実際に起きた同時多発テロをアンソニー・マラス監督の徹底的なリサーチと取材を経て映画化。占拠されたホテルで500人以上もの人々が巻き込まれながら9割の人が無事だった奇跡の理由とは!?



11年前なんて割と最近のことのように感じますが、このインドで起きたイスラム武装勢力による同時多発テロの記憶が皆無な自称ゆるい映画ライターのモグモグです。こんなに悲惨なことが起きていたのかと「ホテル・ムンバイ」を観て今更ながらに驚愕しました。




「ホテル・ムンバイ」とりあえず上映館はこちら!

カメラワークとテンポの良さにハラハラドキドキが止まらなかった!!

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「ホテル・ムンバイ」映画のあらすじとリアルに起きていたこと 感想(ネタバレあり)

2008年11月26日の夜半から29日にかけて起きたムンバイ同時多発テロを起こした10人の若者たちはパキスタン南部のアラビア海沿岸にあるパキスタン最大の都市カラチからムンバイへ船で移動。映画でも彼らが小さなボートで到着するところから始まります。

上陸すると彼らはタクシーに分かれて乗り込み、あるグループはインド最大の乗客数を誇るチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅(CST駅)を襲撃。この駅は壮麗なヴィクトリアン・ゴシック様式の建物で2004年には世界遺産に登録され、インド植民地時代の名残の場所でもあることからテロのターゲットになったと考えらえているようです。

 立派な駅ですね~!

駅のほかにもユダヤ教の宗教施設、欧米人に人気のレストランなどで無差別に殺害、最終的に映画のタイトル「ホテル・ムンバイ」の舞台となる五つ星の『タージマハル・パレス・ホテル』に犯人たちは潜入し60時間も籠城するという前代未聞の事態に!

劇中でも説明がありましたが、ムンバイには警察の特殊部隊がなく、首都のデリーに応援要請をするも到着までに時間がかかり、地元警察もなすすべなく被害は拡大していくばかり。銃声が響き、黒煙が上るホテルの様子はリアルタイムで世界中に生放送されました。それらの報道はテロの首謀者が現地のテロリストたちへの指示にも利用されることになりました。映画でもそのことを示唆するシーンがあります。

10代~20代の若いテロリストたち、1人を除いて結局は特殊部隊または警察によって現場で殺害されるのですが生きたまま捕らえられたその1人が21歳のアジマル・カサブ。劇中でも警察の聴取を受ける本人のリアルな映像が出てきます。

作品の中では特にカサブ役は設定しておらず、特に若いテロリストに焦点が当たっているように思いました。

 リアルな映像

カサブの供述によりパキスタンに拠点を置くイスラム過激派組織『ラシュカレ・タイバ(LeT)』の犯行だということが判明します。これまでもインド国内で過激なテロ事件を何度も起こしている組織で、インドとパキスタンがカシミール地方の領有権を主張する中、イスラム教徒とヒンズー教徒をテロで分断、対立させてインド国内を混乱させようと企てているのです。今回の同時多発テロはインド・パキスタンの歴史的な背景によるものでもあり、また、インド人だけではなく様々な国籍や宗教的背景を持った人をも狙ったことで『LeT』の存在を世界にアピールしたとも言われているようです。(人質の対象者は欧米人、ユダヤ教徒、犠牲者の中には日本人も1人含まれているのだそう)

若いテロリストたちは、家が貧しく金銭を得て家族を助けるためにこのようなことをしている、または、満足な教育を受けておらず無知なために『LeT』に洗脳されしまったのだろうと思わせるシーンが度々あります。ホテルでの人質の中にはテロリストたちと同じイスラム教徒の女性がいたのですが、ひとりのテロリストは命令に背きその女性を殺すことはしませんでした。彼らの背景にあるものは非常に根深く深刻で、ある意味、彼らも犠牲者であるなと思いました。

アジマル・カサブはムンバイテロの4年後に絞首刑により死刑が執行されました。166人の犠牲者を出したテロの首謀者は2019年7月に逮捕したとパキスタン当局が発表しています。

ラシュカレ・タイバの創設者であり、ムンバイテロの首謀者 ハフィズ・サイード

映画の最後には「このテロの首謀者はまだ捕まっていない」と字幕が入りましたが、今年の7月に遂に逮捕とは。『LeT』はパキスタン軍に協力を仰いでカシミールに侵入、テロ攻撃を仕掛けていたのに、世論の影響なのか、はたまたどのような駆け引きが裏であったのか。



「ホテル・ムンバイ」映画のあらすじとキャスト紹介

ホテルで働くウェイター、アルジュン役に『スラムドッグ$ミリオネア』で主演し世界の注目を浴びたデヴ・パテル。今作では制作総指揮も務めています。実在した人物というよりは、ホテルのウェイターと数人のスタッフをモデルにして作り出した役なのだそう。シーク教徒の設定は本人のアイデアだそうで、シーク教徒はイスラム教徒とヒンズー教徒が一つになること、インドのカースト制度を否定し、人は平等であることを謳っています。アルジュンの設定にぴったりだと思いました。

リッチなアメリカ人の建築家デヴィッド役に数々の映画賞にノミネートされた『君の名前で僕を呼んで』アーミー・ハマー。妻のザラと子供、そしてシッターとホテルに泊まりに来ていたところにテロに巻き込まれます。

君の名前で・・早く観なきゃ!!

デヴィッドの妻ザーラ役にナザニン・ボニアディ。彼女はイラン生まれ、歳若いテロリストに銃口を向けられたときに静かにイスラム教の祈りを祈りを唱え始めるシーンは身体的にも精神的にもとても辛かったそう。イラン革命直後にロンドンに移住した彼女はイラン人の人権問題に向き合う国際的な活動家としての一面も持つのだそうです。

 

ホテルのオベロイ料理長役にアヌバム・カー。インドではとても有名な俳優さんだそうです。外国映画にも多数出演、今作でも威厳のある料理長の役が素敵でした。

プレイボーイな大物ビジネスマン、ロシアの陸軍特殊部隊の将校など、複数の人物を合わせたキャラクターワシリー役にジェイソン・アイザックス。始めはゲスな嫌な奴なんですよ、が、後半は彼もまた過去を背負い過酷な人生を歩んできたことを想像させます。『アルマゲドン』『ハリーポッター』『ブラックホーク・ダウン』などハリウッド大作にも数多く出演しています。

アルジュンにはお腹の大きな奥さんとまだまだ小さな娘がいるんです。ホテルでテロが起きたと知ったとき、オベロイ料理長は「家に帰ってもいい、帰ることは恥ではない」とスタッフに言うのですね。

もちろん帰宅するスタッフもいましたが、残るスタッフも多く、ましてやわざわざホテルに戻ったスタッフもいたことに監督のアンソニー・マラスは驚いたのだそうです。ホテルには500人以上の人が取り残され3日間も犯人によって占拠されながらも犠牲者は32人。宿泊客を守ろうとしたホテルの従業員がかなりの犠牲になったことは言うまでもありません。

「ホテル・ムンバイ」を観た友人は『美談にとられがちだけど、カスタマーファースト感覚には激しい違和感を感じる』と。そこまでして、自分をや自分の家族を犠牲にしてまで守らなきゃいけないものがあるのかな!?とモグモグも考えてしまいました。五つ星のタージマハル・パレス・ホテルで働くことが誇りなのでしょうが・・考え方が非常に昔の日本人ぽいというか、三波春夫的というか・・「お客様は神様です」って、三波春夫以外に聞いたことあるかな?え?三波春夫が分からない?帰ってちょうだい!

 東京五輪音頭再びか・・

ホテルはテロ事件から1か月後には一部を再オープンさせ、2年近い修復を終え2010年8月にムンバイのシンボルとして完全復活を遂げたのだそうです。



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