ネコちゃんはそんなに出てこない映画だけどタイトルは「黒猫・白猫」

1998年公開、『アンダーグラウンド』でカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞受賞のエミール・クストリッツア監督による、ユーゴスラヴィアを舞台にした深読みも謎解きもいらないドタバタハッピームービーです。

ユーゴの奇才、裕福な家庭に育った元不良 エミール・クストリッツア監督

こんにちは。下半身の太さが尋常じゃない、自称ゆる~い映画ライターのモグモグです。

映画がお好きな方でしたら、「アンダーグラウンド」をご存じかもしれません。ユーゴスラヴィアの50年に渡る紛争の話を寓話的に描き、カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞を受賞しました。大きな賞を手にしたものの、政治的メッセージにあふれたこの作品は称賛のみならず批判も多く生み出します。

1995年「アンダーグラウンド」

エミール・クストリッツア監督(以下、監督)は元々ロック好きの不良少年(ノースモーキングというバンドにも在籍、映画での音楽もバンドメンバーとして関わっています)自分の撮りたいように撮った作品に外野があれこれ言ってくるのは本当に嫌だったろうなと思います。案の定、(そんなにごちゃごちゃ言うなら)「もう映画は撮らない」宣言をしてしまいます。気持ちは分からんではない。


次作の「黒猫・白猫」はメッセージ性を一切排除の作品に

引退宣言からまもなく映画監督を復帰するのですが、騒動の次に撮ったのがこの「黒猫・白猫」です。

ストーリーは、日頃の素行の悪さから父親に見限られた青年が一発逆転を狙い石油列車の強奪を計画。もう、その計画からしてギャグな感じなのですが。

資金を父親の親友のユーゴのマフィア?に父親が死んだと嘘をついて借りに行きます。青年の計画は吉と出るか凶と出るか、幸運の白猫か不運の黒猫か、タイトルの「黒猫・白猫」はそこからきているのですね!

 マフィアのボスめちゃかっこいい!

ネコちゃん映画だと思って観てしまうとがっかりしてしまうかもですが、人が恋に落ちるところや外国での結婚式の風景、人々が喜び楽しむ姿に心が動かされるのではないかなと思います。

この映画には悲しいシーンが全然ない!


ボスニア紛争での父親の死がもたらしたもの

監督は「アンダーグラウンド」以前にアメリカで映画の講師をしていたことがあるそうなのですが、その時に地元では紛争が起こり、自宅の略奪やボスニア・ヘルツェゴビナの情報省に勤めていた父親の訃報が入ります。ユーゴに戻った監督はこの紛争が起きていることを世界に知らせなくてはならないという思いから「アンダーグラウンド」の制作に取り掛かるのです。

監督のバックグラウンドを知ると、「黒猫・白猫」は監督の父親へのオマージュと家族を思う気持ちにあふれた作品だったことがわかります。

死んでしまったお父さんが生き返ってくれたら・・映画の世界のなかで監督は夢をかなえたのではないかなと思います。泣けてきた。




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