「ザ・トライブ」 無音じゃないけど誰も喋らないR18のウクライナ映画

2014年ウクライナ映画。出演者全員がろうあ者、よってこの映画の言語は手話です。障害があるからってきれいごとだけではすまない。感動ポルノを期待したらいい意味で裏切られます。

こんにちは。自称ゆるい映画ライターのモグモグです。

日々映画から元気をもらっています。そんな栄養ドリンク代わりの映画情報を皆さんにもお届けしたいです。

ろうあ の不良少年少女たちのリアルな日常を描いた作品

「ザ・トライブ」2015年4月に公開されたウクライナ映画です。2014年カンヌ国際映画祭で批評家週間グランプリを受賞し、その他の海外の映画祭でも30以上の賞を受賞しているのだそう。で、ウクライナってそもそもどこの国やねん!!と思ったのは自分だけではないはず。

ウクライナは東ヨーロッパの国。東にロシア連邦、西にハンガリーやポーランド、スロバキア、ルーマニア、モルドバ、北にベラルーシ、南に黒海を挟みトルコが位置している。(wiki調べ)

ウクライナはウクライナ語が公用語だけど、この映画の言語は手話!

※ろうあ(聾唖)の意味は耳が聞こえず、話し言葉が話せない状態のことです


R18+のウクライナ映画

実際に、作品の冒頭で「この映画の言語は手話である 字幕や吹替は存在しない」と出てきます。

作品中にBGMもないし、誰も喋らない(しゃべれない)からセリフもない、自然に発生する生活音はこちらには聴こえるので全くの無音じゃないけれど、すごく違和感を覚えます。自分たちの日常に音楽や言葉が常に流れていることがこの映画を観て分かったかも。

字幕がないので、手話を読み取れない自分たちは手話でのセリフを想像するしかありません。その国の言葉を知らずに旅をしているような感覚。

「音のない映画らしいよ」と事前情報は聞いていたけれど、この映画に惹かれたのはなんと言ってもポスターの写真でした。

裸の美しい若い男女が互い違いになっている写真。とてもきれいだけど生々しい描写にドキッとします。

ストーリーも少女が売春をしたり、堕胎をしたり、暴力があったり、ひとつひとつがリアル(に思える)で、言葉のなさが生々しさに一層の拍車をかけています。

ちなみにウクライナは美人が多くて有名だそうです。




出演者は全員がプロの俳優ではない ろうあ者

会話は全編手話、セリフはないけれど出演者の表情や雰囲気を観ていてもプロの俳優じゃないなんて思えません。

監督、脚本は、この作品が長編映画初となるミロスラヴ・スラボシュピツキー。

「この映画の魔術的魅力は、多くの点で、私たちが手話を理解しないということによっていると思います。」このように語る監督は子供の頃にろう学校の寄宿舎が、監督が通っていた学校の向かいにあったそうで、耳の聞こえない人たちが仲間同士で意思疎通する様子を度々目にし、言葉によらずに感情や情動を直接やり取りができる彼らを私たちよりもコミュニケーションの高い段階にいるのだと思っていたそうです。

「映画の内容を理解する上で会話はまったく必要のないもの」とも監督はインタビューで答えています。




感動ポルノじゃないリアルなポルノ

この手の映画に多い感動ポルノ臭さが皆無。ろうあ なのに不良!ろうあ だけど悪すぎる!障害者が皆、品行方正だなんて誰が決めたわけでもないのに、自分にそんな感覚があったことが軽くショックでした。

始めから終わりまで映像から感じる常に漂うヒリヒリとした空気、緊張感と生々しさは、そんなリアルな彼らだからこそもたらされるものなんだろうなと思わずにいられません。


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